肝腫瘍の精査と言えば肝ダイナミックCT、肝ダイナミックCTと言えば肝腫瘍の精査。
そんな相互関係を持っている肝ダイナミックCTと肝腫瘍についてまとめました!
造影CTオーダーの検査目的に、「HCC s/o」や「肝腫瘍疑い精査」というような記載があるときは撮影方法をダイナミックCTにすることが適切です。
この記事はその理由と、肝腫瘍の鑑別方法についてまとめました!
肝細胞癌と肝血管腫の違いが分からない
肝細胞癌と肝血管腫は、ダイナミックCTを撮影することで鑑別が可能です。
いざ検査を行ったときに、先輩技師がよく予想してませんか?
これは血管腫っぽいね~
↑こんな感じです!
でも、違いが分からないと見分けようがないですよね、、、
そんなあなたに朗報です!分からないなら知ればいいだけのことです!
肝細胞癌と肝血管腫の違いはこれだ!
結局のところ、一番の違いは「染まり方」です。
- 肝細胞癌: 動脈相で強く染まり、門脈相で造影効果が低下(ウォッシュアウト)。
- 肝血管腫: 動脈相で辺縁造影を示し、平衡相まで造影効果が持続。
要するに、先に染まって後から造影効果が抜けるのが肝細胞癌の特徴ですね。最初は周りから染まってだんだんと全体まで造影効果が出てくるのが肝血管腫の特徴、ということです!
ちなみに、動脈相や門脈相、平衡相がどのタイミングの撮影を指しているのかあやふやな人はこちらに詳細をまとめています。
違いが分かったところで、さらに具体的な違いを見ていきましょう!
肝細胞癌と肝血管腫について学ぼう!
本題を大きく分けて3段階にまとめました。
これらすべてを理解できれば、自信をもって違いの分かる男(女)を名乗れますよ~👍
まずは、詳細な肝細胞癌と肝血管腫についてです!
肝細胞癌と肝血管腫について
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれているくらい、肝臓の状態と表面化する症状に差があります。肝臓が音を上げたところで初めて体調の悪さが目に見えてくるわけですね、、、
肝細胞癌と肝血管腫の情報を確認してみましょう!
肝細胞癌について
肝細胞癌は肝臓の細胞ががん化したものです。
肝臓のがんには大きく分けて「原発性肝がん」と「転移性肝がん」の2つがあります。肝細胞癌の分類は前者の、「原発性肝がん」です。
主な原因としてウイルス感染による発症が挙げられます。なんでも9割ほどを占めているようです、、、
世間体によく知られているB型肝炎、C型肝炎によって長期的な炎症と再生を繰り返した結果、自身の肝細胞が突然変異を起こしてがん細胞になってしまうわけです。
肝血管腫について
肝血管腫は、毛細血管の多い箇所が増殖して腫瘍上に成長したものです。
腫瘍上に見えますが、実は非常に細かい血管が絡み合ってできた塊だったということです。多くの血管が集まっている肝臓は血管腫が特にできやすい場所になっています。
脳内にも血管腫ができることがたまにありますが、原理は同じです👍
遺伝的な要因やホルモンバランスの乱れによる影響もありますが、そこまで大きくなければ経過観察で様子を見るのが一般的ですね。
造影剤による染まり具合の違い
肝ダイナミックCTでは造影剤注入後に、後期動脈相、門脈相、平衡相の3つのフェーズで撮影を行います。
肝腫瘍が疑われる所見を注意深く観察することで、造影剤による染まり具合の違いから、腫瘍が肝細胞癌か肝血管腫なのかが分かりますよ!
肝細胞癌の染まり具合
CT造影剤による肝細胞癌の経時的変化を表した図がこちらです。
画像引用:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/web19_10_04/
造影剤注入後最初に撮影する後期動脈相(40s後)にて肝臓全体よりも早く染まっている腫瘍が確認できますね。ですが門脈相(70s後)ではすでに造影剤はかなり抜けており、平衡相(180s後)ではほぼ単純と同じ濃度にまで戻っています。
肝細胞癌の血流は正常な肝臓と比較して速いため、造影効果がすぐに現れて抜ける(wash out)が早いのが特徴です。
食いしん坊(肝細胞癌の細胞)が栄養(血液)を素早く摂取して他の子(正常な肝細胞)が栄養を摂取し始めるころには満腹になっているイメージでしょうか(笑)
肝血管腫の染まり具合
一方でCT造影剤による肝血管腫の経時的変化を表した図がこちらです。
画像引用:https://midori-hp.or.jp/radiology-blog/web19_10_04/
後期動脈相(40s後)にて腫瘍の辺縁が染まり始めているのが分かります。全体的にはまだ染まっていない部分もあるため、ムラがあるといえますね。門脈相(70s後)では造影効果のある範囲が増えてきています。そして平衡相(180s後)では、腫瘍全体が均一に染まっている状態になりました。
肝細胞癌の染まり方と違って、肝血管腫は経時的に全体が染まっていきます。
血管腫は血流の流れが比較的遅いため、造影剤注入後から時間をかけてゆっくりと染まっていくのです。
他に知っておきたい肝臓の疾患や所見
肝臓には、肝細胞癌や肝血管腫以外でも多くの疾患が存在します。
代表的な疾患(CT撮影時に気づけたら素晴らしい!)を3つほど紹介します。
- 脂肪肝
- 肝硬変
- 肝嚢胞
よく見るものもあるのではないでしょうか??
脂肪肝
画像引用:https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/13955
脂肪肝は健康診断で指摘された方も多いのではないでしょうか、、、?年を重ねるにつれてひやひやしてきちゃいますよね(笑)
肝細胞に中性脂肪が沈着している状態の肝臓が「脂肪肝」です。
上記画像の通り、通常なら肝臓はここまで低信号で描出されません(正常だと門脈のほうが肝実質より低信号)。脾臓よりもCT値が低下してしまっているため、立派な脂肪肝です。
コントラストをさらに強調することでより見つけやすくなるでしょう。
食生活の乱れやお酒の飲みすぎには気を付けないといけませんね!!
肝硬変
画像引用:https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/296
肝硬変は、肝細胞の壊死や肝臓内の炎症が持続している状態になると生じる疾患です。
ボロボロの肝臓をイメージしてもらえればと思います。原因としては、肝炎(B型やC形、アルコール性)、銅や鉄などの代謝異常、心機能の低下などがあります。
画像上では肝辺縁の不整や凸凹な感じ、門脈の肥大、胆嚢周囲腔の拡大も見られますね。ちなみに胆嚢周囲腔の拡大は、胆嚢窩(胆嚢がある場所)に脂肪組織が入り込んでいることが原因のようです。
ここまで行くと沈黙の臓器もさすがに音を上げることでしょう、、、
肝嚢胞
画像引用:https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/40345
肝嚢胞は単純CTでも簡単に見つけることができる所見ですね!肝嚢胞は、肝臓内にできた水たまりのようなもので、内部は均一な信号になっています。
先天的に生じている場合が多いですが、外傷や炎症などが原因で後天的に生じる場合もああります。ただし基本的には無症状であり、肝嚢胞のfollow-upで検査をすることはあまりありません。(あまりにも大きく他の臓器に影響を及ぼしそうなら、経過観察を行う場合あり)
肝嚢胞は水たまりであり、内部に血管が走行しているわけではありません。そのため、造影検査を行っても肝嚢胞は染まらないです。
画像引用:https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/40345
↑さすがにこのサイズまで行くと見落とすことはないですよね(笑)
まとめ
ダイナミックCTで造影検査を行った際に、鑑別できる肝臓の所見を知らない方は意外と多いです。
肝細胞癌と肝血管腫の鑑別に有用なことは知っていても、どのような染まり方の違いがあるのかまで把握しておけば撮影した画像の見方も変わってくるはずですよ!
肝細胞癌、肝血管腫以外にもよく見る肝臓の所見をまとめたこの記事を読んでおけば、日々の検査の中でもここで得た知識を活かすことができることでしょう。
他にも造影検査のいろはについてまとめた記事を多く執筆していますので、ぜひご覧ください!
ではまた
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