みなさんこんにちは、診療放射線技師のきんちゃんです。
今回の記事では、腹部レントゲン撮影についてお話ししようと思います。
胸写と同様に、腹写も頻繁に撮影する検査です。それでも、胸写ほどの頻度ではないですけどね(笑)
前回の記事でまとめた胸写編の続編となっているので、まだそちらを見ていない方は胸写編もぜひご覧ください。
この記事を読んで、胸写マスターに続いて腹写マスターにもなっちゃいましょう!!
腹写って何?
前提知識を確認しておきましょう。
腹写とは、腹部レントゲン撮影を略したものであり、腹部のレントゲン撮影を行う検査です。
ただ、腹写や腹単など職場によって言い方が異なると思います。
この記事では統一性を持たせる意味で「腹写」とさせていただきます!
普段の言い方と違うと思ったそこのあなた、許して!!(笑)
腹写について学ぼう!!
それでは、ここからは腹写について学んでいきます。
まずは、撮影する際の患者の体勢から見ていきましょう!
撮影体位の種類
腹部レントゲン撮影には、いくつかの基本的な撮影体位があります。
それぞれの体位は異なる情報を提供し、特定の病変の診断に役立ちます。
様々な病院で実際に撮影している、主要な撮影体位を以下にまとめました。
なお、きんちゃんの病院では側面撮影はほぼ撮影したことがないらしいです。
(きんちゃんが入職してから腹部側面撮影は1回も見ていません(笑))
その他の撮影体位については何度も撮影しているため、皆さんと一緒に今一度具体的に学ぶことでより知識と理解を深めていきましょう!
全体で共通しているポイントと撮影の流れ
腹写の際に、どの体位でも共通しているポイントと実際にきんちゃんの病院でやっている撮影の流れをお話ししていきたいと思います。
撮影する際の流れを把握することでイメージをしっかり固めましょう!
大まかな流れは以下の通りです。
- 患者情報と検査目的の確認
- 患者の呼び込み
- 撮影の説明と準備
- 正確なポジショニング
- 息止めの合図に合わせて撮影
患者情報と検査目的の確認
撮影を始める前に、患者の情報と検査の目的を確認しましょう!
これは、正確な診断と適切な撮影方法を選択するために重要です。
患者の氏名、年齢、性別、既往歴、状態などをチェックし、医師からの指示と検査目的を再確認して撮影方法の変更が必要ないか?を確認します。
例えば、立てるような患者ではないのに立位でのオーダーが出ている場合は臥位での撮影の変更に検討しましょう。(オーダー依頼医の判断を仰ぐようにしましょう。)
場合は、必要に応じてサポートしながら検査室へ誘導しましょう。
患者の呼び込み
患者を撮影室に呼び込みます。
名前を元気に大きな声で呼ぶことで、耳が聞こえにくい人でもわかるように心がけましょう。
また、患者がリラックスできるように、丁寧な対応を心掛けます。
車いすや杖歩行などで患者の移動が困難な場合は、必要に応じてサポートしながら検査室へ誘導しましょう。
撮影の説明と準備
撮影室に入ったら、今から行う検査と撮影する部位を患者に説明します。
患者が安心して検査を受けられるように、丁寧に話すように心がけましょう。
過去に何度か検査をしたことがある人も、初めて検査を受ける人も理解できるように話します。
また、撮影部位に服のボタンやチャック、アクセサリーなどがかぶる場合は検査着への着替えもしてもらいましょう。
寒い季節にはホッカイロを貼ってる患者さんも多いです、注意してください!
正確なポジショニング
患者のポジショニングを正確に行います。
これは、撮影の質を左右する重要な工程です。
例えば、立位正面撮影の場合は、患者の体をパネルに密着させ、肩を下げてリラックスさせるように指示します。
加えて横隔膜の上端が欠けることがないように、パネルや管球を動かして上下左右方向に位置を調整しましょう。
ポジショニングが正確でないと、診断に必要な情報が得られないことがあります。放射線技師として一番の腕の見せ所ですね!!
息止めの合図に合わせて撮影
腹写の場合はポジショニングが完了したら、患者に大きく息を吸った後で吐き出してもらってから息を止めてもらいます。
こちらの指示が入らない患者の場合(乳幼児、寝たきり、意思疎通不可)は胸や腹の動きを見てタイミングよく撮影ボタンを押します。
撮影した画像を確認して問題がなければ検査終了です、お疲れ様でした!
それぞれの体位での撮影で注意するポイント
次に、それぞれの撮影時に注意するポイントについてお話ししていきます。
立位正面撮影(PA)
立位撮影では、横隔膜が画像内に入りきっていることが重要です。(フリーエアーの観察をするため)
きんちゃんは、横隔膜を入れるための指標として肩甲骨下縁を意識しています。
肩甲骨下縁から2押子下に光照射野上端を合わせることで上は問題ないでしょう!あとは、恥骨結合と同じ高さにある大腿骨大転子を探して照射野に含めるだけです!
体格によっては撮影距離を大きくすることもあります。
小柄な人なら100cmが多いですが、大柄な人は150cmで撮影していることが多いですかね。
臥位正面撮影(AP)、KUB撮影
臥位の撮影時も着目ポイントは、立位時とほぼ同じです。
きんちゃんの病院では、KUB撮影も臥位正面撮影で行っているため腎臓や膀胱(恥骨結合)が欠けていないかは注意深く観察しています。
撮影した画像の濃度を調整して腎臓の陰影を探すのもありですが、以前に体感部CT撮影を撮影している人であれば、それを見ながらおおよその腎臓の位置を把握してレントゲン画像内に腎臓が含まれているか判断するのもよいでしょう!
側面撮影(デクビタス撮影)
きんちゃんの病院では側面撮影(デクビタス撮影)は行っているのを見たことがないので、教科書的な話になってしまいますが、、、
体位を左側臥位(左側が下になるように横向きになる)にすると、もし腹腔内に穿孔があった場合はそこから漏れた空気やガスが体の右側にいきますよね?
逆位の場合を除いて、胃は身体の左側にあることが多いため、肝臓などがある右側に空気が溜まっている状態が観察出来たら腹腔内穿孔疑いとして扱うことができるのです!(空気が胃と重なると、胃泡として見られる可能性もあるため)
また撮影体位は真横のため、姿勢保持が困難な患者のために、膝を軽く曲げてもらったり、補助具で体が前後に倒れないようにすることも大事ですね!
個人的な経験と学んだこと
ここからは、私が診療放射線技師として働いてきたなかで、学んだ経験などをちょろっとお話しします。
きんちゃんが職場の先輩の動きを見て学んだ事柄でもあるので、新人の技師さんは積極的に意識してはいかがでしょうか?
距離は余裕をもって撮影する
撮影時には、管球とパネルの距離を余裕をもって確保することが重要ですので、体格の大きい人は撮影距離を大きくして撮影することも考慮しましょう!
職場では、立位でも臥位でも100cmでの撮影が基本と教えられました。
しかし、100cmで腹部レントゲン撮影を行えるような人は全体の4割くらいなため、半分以上の人に対しては撮影距離を大きくして撮影しています。
(体感の話です!!)
恥骨を入れるときは直接触って位置確認する
撮影範囲の下端を確認する際には、恥骨をしっかりと撮影範囲に入れることが重要です。
このためには、直接触って位置を確認することが手っ取り早いです。
患者に説明を行い、了承を得た上で素早く触知を行い、正確なポジショニングを実施します。
横隔膜を入れるときは、肩甲骨下端を意識する
横隔膜を撮影範囲に入れるためには、肩甲骨の下端を意識してポジショニングをしましょう。
きんちゃんは肩甲骨下端から2押子したを基準にポジショニングを行っています。
これにより、横隔膜を確実に捉えた画像が得られるでしょう!この方法は、特に立位正面撮影で有効です。
まとめ
腹部レントゲン撮影について理解していただけましたか?
腹写は、胸写よりも撮影機会が少ないかもしれませんが、正確なポジショニングや患者への丁寧な説明が求められます。
特に、距離を余裕をもって取ること、撮影範囲の下端となる恥骨を確認する際に直接触って位置を確認すること、撮影範囲の上端となる横隔膜を捉える際に肩甲骨下端を意識することが重要です。
これらの知識と技術を習得し、実際の経験から得た教訓を活かすことで、腹写マスターにあなたもなりましょう!!
ではまた
~2024年7月24日追記~
頭部、腰椎レントゲン撮影についてもまとめました!こちらの記事もぜひご覧ください!
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