レントゲン撮影条件の基本を押さえよう

レントゲン撮影は、医療現場に欠かせない重要な診断手段の一つです。毎日多くの患者さんのレントゲン撮影をしていることは、どの新人放射線技師の方にも言えることでしょう。
しかし、適切な撮影条件を設定しなければ、正確な診断に必要な画像を得ることはできません。さらに、患者さんの被曝線量を抑えるためにも、正しい知識と技術が必要です。
この記事では、放射線技師としての現場経験をもとに、撮影条件の基本と撮影部位ごとの目安について、分かりやすく整理しています。新人技師の方も安心して学べる内容ですので、ぜひ参考にしてください!

- 「きんちゃん」20代診療放射線技師
- 放射線技師歴5年目(2025年4月30日現在)
- 大学病院、総合病院、中小規模病院(脳神経メイン、循環器メイン)経験
- 2回の転職で、XP、CT、MRI、骨密度測定、透視、アンギオ、放射線治療を経験
よくある現場の悩み

レントゲン撮影をするときに重要なのはポジショニングと撮影条件です。AEC(自動露出制御)で撮影条件は勝手に最適化されますが、たまに手動で線量をいじっている先輩を見ませんか?
この記事では以下の悩みに対する疑問を解決できるような話をまとめています。
撮影条件を間違えると、再撮影や診断ミスにつながり、患者さんの被曝リスクも増えてしまいます。その不安を少しでも解消できるよう、部位別の標準撮影条件と、各パラメータの意味・使い方をまとめました。
最後まで読むことで、レントゲン撮影に対する不安を減らし、自信をもって撮影ができるようになりますよ!
撮影部位別:参考条件一覧表

きんちゃんが撮影経験のある部位を中心に、部位ごとの撮影条件を表にまとめました!病院ごとにそれぞれ若干異なるとは思いますが、おおむね妥当な数値になっているのではないでしょうか?
なお、当記事ではこちらの参考書からの数値を一部引用しています。
それでは、以下、撮影部位ごとの撮影条件になります!

撮影条件は部位ごとに違っていますが、先輩技師たちはすべてこの数値を覚えているのでしょうか?さすがにそれができるのはほんの一握りすぎますね、、、(笑)
腹部正面の撮影条件を基準に(体験談)

私が教わった話では、腹部の撮影条件を基準として、線量を調整していました。
腹部正面:70kV, 200mA, 0.1s, (20mAs)
体厚が腹部と同じくらいであれば、管電圧は変えず、内部が骨のような高吸収の物体が多ければ曝射時間を上げる、というような感じです。(管電流は増やさなくてもよいという教えを受けていました)
あくまでイメージと感覚による条件の調整なので、撮影条件を調べられる環境であれば調べたほうが無難だと思います。
各パラメータの役割とポイント

それではここから、各パラメータの役割とポイントを解説していきます。教科書的な意味合いだけでなく、実際の現場で使えそうな内容も含めてお話ししていきますね。
レントゲンの各パラメータはこちらのとおりです。
順番に一つずつ見ていきましょう!
管電圧(kV)
X線のエネルギー(透過力)を決める最重要因子
- 管電圧が高いほどX線のエネルギーは強くなり、身体を透過しやすくなります。
- その結果、厚い部位でも撮影可能になりますが、画像のコントラストは低下します。
- 一方、低いkVではコントラストは上がりますが、X線が透過しづらくなり、必要な線量(mAs)は増加します。
部位 | 推奨kV | 理由 |
---|---|---|
胸部(成人) | 120〜140 | 高エネルギーで肺を透過しやすく、コントラストも適正 |
四肢・関節 | 50〜70 | コントラスト重視、浅部撮影向き |
小児 | 50〜70 | 被ばく低減のため低kVを使用(体格に応じて調整) |
管電流(mA)・撮影時間(s)
X線の量をコントロールする要素(mAsの構成要素)
- 撮影中に流す電流(mA)と照射時間(s)を掛けた値がmAs(ミリアンペア秒)になります。
- 高mA×短時間 = 動きのある部位に有効(胸部や小児)
- 低mA×長時間 = 動きが少ない部位に適応(頭部や骨盤)
- 撮影部位が動きやすい(小児、心拍による胸部のブレ)場合は、時間を短くしてmAを上げる工夫が重要。
- 動きのない部位は、被ばくを抑えるためにmAを抑えつつ撮影時間を長く設定して調整する。
mAs(ミリアンペア秒)
画像の明るさとノイズに関わる決定因子
- mAsが高いほどX線量は増加し、画像は明瞭になります。
- しかし、被ばくも直線的に増加するため、必要以上に上げない工夫が必要です。
- mAsが低いとノイズが増え、再撮影のリスクが高まるため、適正な設定が重要。
- 撮影部位や体格ごとの標準mAsの目安を覚えておくことが、再撮影の予防に役立つ。
- グリッド使用時やSID(撮影距離)が長い場合は、mAsを補正する必要あり。
撮影距離(cm)
線量と画像解像度のバランスを取る重要因子
- SIDが長いほど、X線の広がりが抑えられ、画像の歪みや拡大が少なくなります。(半影の縮小)
- ただし、距離が長くなると線量が減少するためmAsを増やす補正が必要になります。
SID | 使用例 | 特徴 |
---|---|---|
100cm | 頭部、四肢 | 線量効率が高く、装置が小さい施設に適応 |
150cm | 頚椎側面、腹部 | 拡大抑制と画質維持のバランスが良い |
200cm | 胸部正面 | 胸部全体の再現性が高く、心臓の拡大を抑制可能 |
グリッドの有無
散乱線を除去してコントラストを向上させるが、線量増加に注意
- グリッドは、体内で散乱したX線(ノイズ)を除去し、画像のコントラストを向上させる働きがあります。
- 一方で、X線の一部も遮断するため、その分mAsを上げて補正する必要があります。
- 通常、体厚が15cm以上ある部位ではグリッド使用が推奨されます。(きんちゃんの働いていた病院では、大腿部や頭くらいの厚さまで使用していました。)
まとめ:被ばく量に影響する主な因子と調整の目安

レントゲン撮影では、画質と被ばく線量のバランスがとても重要です。撮影条件を適切に設定するために、以下の因子を理解しておきましょう。
因子 | 上げた場合の効果 | 下げた場合の効果 | 臨床での工夫 |
---|---|---|---|
管電圧 | 透過力↑、被ばく↓、コントラスト↓ | 透過力↓、被ばく↑、コントラスト↑ | 厚い部位は高め、小児は低めで調整 |
mAs | 明るさ↑、ノイズ↓、被ばく↑ | 明るさ↓、ノイズ↑、被ばく↓ | 再撮影のリスクを考慮して適正設定 |
撮影距離(SID) | 解像度↑、被ばく↑(補正が必要) | 解像度↓、被ばく↓ | 胸部は200cmで心臓拡大を抑える |
グリッド | コントラスト↑、被ばく↑(mAs補正必要) | コントラスト↓、被ばく↓ | 使用時は体厚・部位に応じて判断 |
整形領域の病院では再撮を前提として条件設定をしていたり、大学病院では照射野を絞って必要部位さえ写っていればよい、というような感じで多種多様です。
撮影した画像が黒く抜けすぎていたり、白くとびすぎている場合は線量不足or過剰照射の可能性が高いです。先輩に確認をしながら、最適な撮影条件を身に付けていくようにしましょう!
ではまた
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