もっと脳梗塞を学ぼう! その2

放射線技師の知識アップグレード

脳梗塞についての記事を読んでくださった皆様、さらにレベルアップしたくありませんか?

そんな皆様のための、もっと学ぼうシリーズの第2弾です!

前回に引き続き、メジャーな脳梗塞のより深いところを学べればと思います。

ぜひ最後まで見ていいただいて、脳梗塞マスターを目指しましょう!!!

脳梗塞の分類を学ぼう!!

前回のおさらいをしましょう!

撮影した患者が脳梗塞だと判明しても、すべての脳梗塞に対して同様の治療方法が適用されるわけではありません。

それぞれの脳梗塞に対して、適切な治療を行うためにも

病型分類は必要不可欠です。

脳梗塞を、臨床病型と発症機序の観点から分けると以下のようになります。

臨床病型発生機序病態・原因
①塞栓性梗塞塞栓性心原性(心房細動→左心耳血栓)
動脈原性※(頸動脈plapue破綻)
※は同じ病態。奇異性(右左シャント)
②アテローム血栓性血栓性主幹部から皮質枝レベル
塞栓性※Plaque破綻→遊離→末梢閉塞
血行力学的主幹動脈狭窄~閉塞→灌流圧↓
③穿通動脈閉塞(広義のラクナ梗塞)細小動脈硬化穿通動脈細動脈硬化(ラクナ梗塞)
血栓性起始部血栓による分枝粥腫型梗塞
塞栓性微小塞栓。主幹動脈に一過性閉塞→再開通。
血行力学的主幹動脈狭窄~閉塞

臨床病型では3種類に分けられます。

  • 塞栓性脳梗塞
  • アテローム血栓性脳梗塞
  • 穿通動脈閉塞(広義のラクナ梗塞)

それぞれの詳しい説明をしていくわけですが、今回の第2弾では

アテローム血栓性脳梗塞

をメインで説明します。

一緒に学んでいきましょう!!

どんな脳梗塞なの?

アテローム血栓性脳梗塞とはどのような脳梗塞なのでしょうか?

というか、名前にも含まれているアテロームって何なのでしょうか?

まずはそこからお話ししていきますね。

アテロームって何??

アテロームとは、粉瘤のことです。

粉瘤とは、皮膚の下に袋ができてその中に皮膚の角質や皮脂が溜まる腫瘍の総称です。

「腫瘍」というと、がんをイメージしやすいですが、アテロームは他に転移しない良性腫瘍の類となります。

ニキビなどをイメージすると想像しやすいでしょうか。

ちなみに、この粉瘤に細菌が侵入すると化膿して腫れや痛みを伴うようになります。

これは「炎症性粉瘤(炎症性アテローム)」と呼ばれ、適切な処置が必要になります。

本題に戻りましょう。

アテローム血栓性脳梗塞とは?

アテローム血栓性脳梗塞は太い血管に粥状動脈硬化が起こることが原因で起こる脳梗塞です。

粉瘤の場合は皮脂や角質が、皮下の袋に溜まることで発生すると説明しましたが、

この脳梗塞の場合は、動脈血管にアテローム性動脈硬化が起こることで脳梗塞が起こります。

アテローム性動脈硬化によって動脈血管壁の中に主に脂肪で構成されるまだら上の沈着物(アテロームあるいはアテローム性プラーク)が形成されることで血管腔を狭窄あるいは閉塞させます。

なお、アテローム血栓性脳梗塞には3種類のなり方があり、

  • 血栓性
  • 塞栓性
  • 血行力学性

に分けることができます。

血栓性とは、粥状動脈硬化が進行した結果、脳の血管が閉塞してしまい起こる脳梗塞です。

塞栓性とは、粥状硬化に伴って形成された血栓の一部が崩壊し、塞栓子となって末梢の動脈を閉塞して起こる脳梗塞です。

動脈から末梢の動脈へと血栓が飛んで詰まる(閉塞する)ため、artery-to-artery embolismとも呼ばれます。

最後に、血行力学性ですが、もともと動脈硬化で細くなっている脳の血管に、急激な全身の血圧低下や心拍出量低下が加わった結果、末梢部へ血液が行き届かなくなり起こる脳梗塞です。

他の脳梗塞との違いは?

アテローム血栓性脳梗塞は、動脈硬化(アテローム硬化)が原因となって起こる脳梗塞です。

一朝一夕でできるものではなく、時間をかけて徐々に形成されていきます。

脳の太い血管はアテローム硬化が進行するにつれて少しずつ血液の通り道が血管腔に比べて狭くなっていきます。

すると正常な生体反応によって、脳への虚血を防ぐために、末梢に側副血行路の発達が見られます。

そのため、何の前触れもなく突発的に発生する心原性脳梗塞と比較すると、虚血に対する防御反応がある程度形成されているのが特徴であるといえます。

脳梗塞が発生した場合にも、その被害を最小限にとどまるように側副血行路が活躍します。

心原性脳梗塞では、皮質を含めた広範囲が脳梗塞に陥っていましたが、

アテローム血栓性脳梗塞では、皮質は保たれていて脳梗塞の範囲は限定的であるといえます。

実際の画像を見てみよう!!

それでは実際の臨床画像を紹介します。

MRIの画像を一緒に見ることで、さらに理解を深めましょう!!

症例:40歳代男性 構音障害

左側はDWI、右側は同スライスのADCの画像です。

左の頭頂葉にDWIで高信号を認める箇所があり、また、同部位はADCでは低下しているのが分かります。

新規の脳梗塞である可能性が高いといえるでしょう。

その前方にもDWIで淡く高信号になっている箇所が見られますが、こちらはADCでの信号低下が見られません。

陳旧性の脳梗塞ではないかと思われます。

他の撮像シーケンスも確認してみましょう。

次にFLAIRを見てみると、DWIで高信号・ADCで信号低下を来している部位は、高信号を示していますので、急性期以降の新規脳梗塞であることがわかります。

一方でその前方の高信号はFLAIR像で高信号となっていますが、黒い抜け(粒々のようなもの)を内部に認めていることからも陳旧性脳梗塞であることがわかります。

最後に脳の血管を評価するMRA画像のMIP像と呼ばれる画像です。

左のMCAの水平部(M1)に狭窄を認めていることがわかります。
また中大脳動脈の末梢は右側と比べると左側で描出が不良です。

これらから、左中大脳動脈の狭窄によるアテローム血栓性脳梗塞(なかでも血栓性)と診断されました。

まとめ

いかがでしたか?

今回は、もっと学ぼうシリーズの第2弾として脳梗塞の内の一つである

アテローム血栓性脳梗塞について説明させていただきました。

その2ということで記事のまとめ具合も第1弾に比べて、脳梗塞に対する皆様の理解は急上昇しているはずです!!

読んでくださった皆様にとって理解しやすい記事になっていたのならば幸いです。

脳梗塞のもっと学ぼうシリーズ第3弾にも現座着手しておりますので、近々の更新をぜひお待ちください!!

ではまた

引用:脳梗塞の種類(分類)まとめ!心原性、アテローム血栓性、ラクナ梗塞! (xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp)

アテローム(粉瘤)の原因と治療や手術について解説 | ひまわり医院(内科・皮膚科) (soujinkai.or.jp)

コメント

タイトルとURLをコピーしました