症例に関するお勉強の時間がやって参りました。
今回ご紹介するのは、「くも膜嚢胞」です。
くも膜と聞くと、SAH関連を勘ぐる方もいるかもしれませんが、果たしてどのような病気なのでしょうか?
詳しく一緒に学んでいきましょう!
くも膜嚢胞の基礎知識
まずは基本的な知識から確認しましょう。
「くも膜」についてから確認します。
くも膜とは?どこにあるの?
以下はくも膜について、他のサイトからの引用です。
くも膜は、脳脊髄を覆う3層の髄膜のうち、外から2層目にあたるものである。硬膜には密着しているが、内の軟膜との間には脳脊髄液で満たされているくも膜下腔があり、小柱という線維の束がくも膜と軟膜をつなぐ。
イラスト合わせて確認しましょう。
なお、くも膜内の血管に異常が起こると生じる病気があります。もう少し詳しく見てみましょう。
くも膜下腔内に存在する動脈瘤が破れるとくも膜下出血をおこし、空間が限られる頭蓋内では重症化しやすい。脳内脈絡巣から産生された髄液が、脳表のくも膜顆粒、軟膜を介して吸収される。くも膜下出血などでくも膜下腔の髄液吸収路が障害されると、髄液貯留がおこり水頭症となる。
出ましたね、くも膜下出血!!!
こいつについては別の記事で紹介していますので、まだ見ていない方はぜひご覧ください!
くも膜下出血についてはこちらから
水頭症についても、また他の記事で詳しく解説しますね。
くも膜嚢胞ってなに??
では、本題に入りましょう。
くも膜嚢胞とはズバリ、くも膜の一部が袋状になったもののことです。
先天性と二次性に分けられ、生まれつきある方もいれば、外傷や炎症によってくも膜嚢胞ができるケースもあります。
好発部位は?
- 側頭葉先端部(側頭極)近傍の中頭蓋窩が約半数
- 鞍上槽
- 小脳橋角部
- 後頭蓋窩
- 円蓋部
などで見られます。
半数近くが、中頭蓋窩でみられるんですね。
症状は?
基本的にはほとんど症状がありません。
ただし、くも膜嚢胞ができた場所や大きさによっては、以下のような症状が出る場合もあります。
- 頭痛
- 肩こり
- 痙攣発作
- 対麻痺
- 感覚障害
症状伴う場合は、手術で摘出します。
実際の画像所見を見てみよう
くも膜嚢胞は、脳脊髄液とほぼ同じ信号強度(等吸収)を示す嚢胞性病変として見られます。
すなわちCTでは周りの脳脊髄液と同じように低吸収(黒く)として見られますし、MRIでも周りの脊髄液と同じようにT1強調像では低信号、T2強調像では高信号の嚢胞性病変として認められます。
ただし、T2強調像では周りの脳脊髄液と比較して若干高信号に見られることがあり、これはこの嚢胞内だけ脳脊髄液の流れによる信号(flow void)が消失しているためと言われています。
それでは、実際の画像を見てみましょう!
10歳代男性 CT
右中頭蓋窩(側頭葉先端部)にくも膜嚢胞を疑う髄液と等吸収な低吸収域を認めています。
70歳代女性 MRI
左中頭蓋窩(側頭葉先端部)にくも膜嚢胞がありますね。
40歳代女性
左前頭部にくも膜嚢胞があり、前頭骨の内板の菲薄化を認めています。
70歳代男性
左前頭側頭部に髄液と同じ信号強度を示す嚢胞性病変あり。くも膜嚢胞が疑われます。
前頭骨の内板の菲薄化を認めています。
治療が必要なときはあるの?
偶発的に見つかることが多いくも膜嚢胞ですが、症状がなければ基本的には治療介入はしないことが多いです。
ただし、
- くも膜嚢胞が原因でてんかんが起こっていると考えられるとき
- 硬膜下血腫や嚢胞内出血を来して頭蓋内圧が亢進した場合
などが治療の対象となります。
有症状の場合も治療介入をするケースがあるので、くも膜嚢胞の位置や大きさなどで対応方法は変わってきますね。
まとめ
いかがでしたか?
先にご紹介したSAHや脳梗塞と違って、早急な対応が必要な所見ではありませんが、ものによってはかなり大きいものもあるため書体が不明だと焦ることでしょう。
この記事を読んでいただいた皆様はすでにくも膜嚢胞についての学習が済んでいるわけですから、安心して読影を行うことができますね。
この調子でどんどんレベルアップをしていきましょう!!
ではまた
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