そもそもSAHとはなにか?
日本語に訳すと、SAH:Traumatic Subarachnoid Hemorrhage=外傷性くも膜下出血です。
一般に知られているくも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂によって引き起こされるものですが、
外傷性SAHは、外傷が要因で発生する状態です。
交通事故やスポーツ時のケガ、さらには転倒による頭部打撲などでも起こる可能性があります。
外傷性SAHとは?
外傷性の場合は、外傷を受けることが原因でくも膜下腔に出血をきたした状態です。
引用したイラストを基にご説明します。
上記イラストの水色の部分がくも膜下腔であり、主に架橋静脈の破綻によって出血が起きます。
きんちゃんが働いている病院でも外傷性SAH患者は搬送されてきます。
搬送されてくる要因は交通事故や泥酔状態での転倒、運動中の激突やケガなど様々ですが、
共通しているのは頭部打撲です。
頭部打撲の衝撃により、くも膜下腔の静脈(架橋静脈)が破綻してくも膜下出血をきたしますが、
硬膜下血腫や脳挫傷に伴う出血によるくも膜下腔に穿破することが原因で起こることもあります。
もし、目撃者がいなかった場合は、くも膜下出血を起こして倒れたことで外傷を受けたのか、先に外傷を受けたことでくも膜下出血を生じたのか、見た目では分かりません。
日常生活の中でそのような人を見つけたら速やかに救急搬送しましょう。
外傷性SAHの見つけ方
画像診断をしましょう!!
救急搬送された際は、まずCTあるいはMRIが第1選択になります。
CTでは、脳溝やシルビウス裂に出血がみられます。
以下に実際の症例画像を載せます、一緒に読影してみましょう。
50代女性 頭部外傷
右前頭側頭部に帽状腱膜下血腫(〜皮下血腫)を認めています。ややわかりにくいですが、両側のシルビウス裂、左側の脳溝に沿った外傷性くも膜下出血を認めているのがわかります。
外傷部位と対側に出血が多いようにも見えます。
脳挫傷によって、脳みそ自体が頭蓋骨の内側に衝突し出血が生じている可能性があります。
頭部CT 冠状断像
冠状断像においても同様の所見を認めています。両側にあれば一見見落としてしまいそうですが、この症例では左で出血がやや目立ちます。
シルビウス裂は高吸収になると比較的わかりやすく変化するため、要確認ポイントです。
脳溝の位置を確認しよう
脳溝やシルビウス裂の異常を把握するためには、それぞれの正常な解剖や位置を知っておく必要があります。
一緒に学びましょう!!
高吸収(白い)部位を探すことが大事です。出血部分は白い信号で表現されます。
画像上で、本来見えるべきくも膜下腔が見えないことを探すという点も重要です。
治療方法は何がある?
脳動脈瘤の破裂が原因ではないため、一般的には手術の対象にはなりません。
- 保存両方が一般的
- 手術はしない
- 例外あり
ただし、外傷によって脳動脈瘤の破裂が起こっている場合や脳挫傷を合併している場合は手術の対象となる可能性があります。
保存療法
- 止血
- 脳の圧力を低下させる。
- 脳の浮腫を抑える。
- 再出血予防
薬剤を投与して安静にするのが一般的な保存療法です。
血液は時間と共に自然に吸収されていきます。
しかし、脳圧亢進や浮腫、血腫がひどい場合には再出血をする恐れもありますが、その際は、減圧術や脳室ドレナージといった処置を行うことがあります。
まとめ
外傷性SAHは、救急搬送される頻度が高いです。
そして頭部CTで読影をすることが、診断に有用です。
きんちゃんは現在、当直やオンコールも業務の一環として救急対応も行っています。
一人で画像の撮影から処理、再構成まで行うわけですが、頭部外傷の患者が搬送されてきた時はいつもドキドキしながら撮影しています。
この記事を読んでくださった皆様が少しでも、新たな学びを発見していただければと思います。
一緒に一歩ずつ成長していきましょう!!
ではまた
引用:画像診断まとめ | 画像診断まとめサイトです。CTおよびMRIの画像診断に必要な知識および実際の画像を主に掲載しています。 (xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp)
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