頭頚部CTAを撮影出来たら1人前

頭部CTAとセットで頻繁にオーダーが出されやすい頚部CTA、「頭頚部CTAが撮影できたらCTは1人で回せる」みたいなことを先輩から言われていました。
頚部CTAは頭部CTAと撮影タイミングが異なり、複雑に感じる人も少なくないように思います。まだ検査自体を覚えたてで、流れに自信がない方に向けた復習用の記事としても活用していただけたら幸いです。
撮影手順はもちろん、全体の流れや頭部CTAから続けた撮影するケースについてもまとめました。
きんちゃんが実際に経験した内容を基にまとめたので、お役に立てるかと思います!👍

- 「きんちゃん」20代診療放射線技師
- 放射線技師歴5年目(2025年4月30日現在)
- 大学病院、総合病院、中小規模病院(脳神経メイン、循環器メイン)経験
- 2回の転職で、XP、CT、MRI、骨密度測定、透視、アンギオ、放射線治療を経験
撮影の最終目的は、頭頚部血管を造影→3D画像を作成すること!

画像引用:http://iwakuni-med.jp/houka1/kanjya-ct1.html
そもそも頭頚部CTAの撮影目的は何なのでしょうか?オーダーの検査目的を確認してみましょう。
- Rt-MCA AN精査
- Lt-ICA AN術後 f/u
- Rt-neckICA 狭窄精査
などなどetc…
MCAやICAなど、脳外科にいたら嫌でも覚える医療略語がたくさん出てきましたね。意味が分からない方は、きちんと調べないと先輩に怒られますよ!

検査目的も分からないで撮影していたのか!?
脳血管や頚部血管の中で精査したい部位や所見、手術をした箇所があるため、造影剤を流して血管を造影します。
撮影して得られた画像データを使って、3D画像を作成したいから検査オーダーが出ているわけです👍
頭頚部CTAの流れ(経験則のため施設による)

まずは頭頚部CTAの検査の流れを確認しましょう。以下に、きんちゃんが実際に行っていた流れをまとめました。
- 患者入室
- 検査説明、ポジショニング
- 頭部単純撮影
- 頭部CTA撮影
- 頭部造影撮影
- 頚部ポジショニング
- 頚部CTA撮影
- 撮影終了、再構成
頭部CTAについては、前回の記事で詳細をまとめています。頭部CTAを詳しく知りたい方はそちらの記事をご覧ください。
当記事では頚部CTAをメインでまとめているので、上記流れの6,7を紹介します。
患者入室(頚部CTAのみ撮影時の場合)

まずは患者を検査室まで案内します。看護師さんが連れてくることもありますが、技師自身でお連れして本人確認を行います。
患者の本人確認が完了したら、ルートが20Gか、耐圧チューブか、逆血はあるか、などしっかり確認してベッドに寝てもらいましょう。
頭、頚部を撮影するため、眼鏡や補聴器、他にも金属や機械類を身に付けていたら、外してもらう必要があります。入れ歯も外せるなら忘れずに外してもらいましょう!(入れ歯は特に忘れがち!)
- 患者の本人確認
- 造影ルートは問題ないか?
- 撮影範囲に被る金属、機械類は外してもらう(入れ歯は忘れがち!)
検査説明(頚部CTAのみ撮影する場合)

頭頚部CTAを経験した患者も、初めて検査を受ける患者も同様に検査説明を行います。必ず伝える点は次の3つです。
下2つは、造影検査を行う患者全員に伝えている内容です。
「頭を絶対動かさない」理由は、再構成の時に効いてきます。サブトラクション処理で3D画像の元データを作成するのですが、サブトラで使うデータにブレがあると、きれいに血管だけを抽出できないんですよね~
そのため、頭部をがっちり固定して患者本人にも頭を動かさないように注意してもらっています。
ここまでで、頭部CTAも頚部CTAも説明する内容は同じです。唯一異なる点は、頚部CTAだと息止めのアナウンスがあることを伝える必要があるくらいですかね。
実際には胸部の上半分くらいまで撮影するので、体動だけでなく呼吸の動きでアーチファクトが出ないように息止めをしてもらいます。
(詳細は再構成の話で解説します!)
- 患者への説明
- 造影剤の説明はしたか?
- 息止めのアナウンスがあることを伝えたか?
頚部ポジショニング
頭部CTAのポジショニングと異なる点は大きく分けて2つです。
顎を挙上するのは、歯のアートファクトを最小限に抑えるため&総頚動脈分岐部にアーチファクトがかからないようにするためです。
検査目的の多くが「頚部内頚動脈狭窄s/o」や「CEA術前」など、分岐部の状態を把握することが大事になっています。
アーチファクトで目的部分が見えなくならないようにするために、顎挙上が大事になってくるんですね👍
もちろん、患者ごとに総頚動脈が分岐する高さは違うので事前リサーチが大事ですよ!

体幹部固定は、撮影範囲が頚部~大動脈弓部までと広範囲になるためです。頭部だけでなく体幹部も固定して、3分枝や大動脈弓自体がモーションアーチファクトでぶれないようにします。
- 頚部、体幹部の固定
- 顎は挙上したか?
- 総頚動脈の分岐位置は理解しているか?
頚部CTA撮影
頚部CTA撮影は大きく分けて5シーケンスの撮影を行います。
- スカウト(位置決め)
- サブトラ用単純
- Real prep用スライス(頭部CTAから撮影しているなら不要)
- 頚部動脈相
- 頚部静脈相
2,5は撮影範囲が同じで、4は一番範囲が長いです。

スカウト(位置決め)
スカウト(位置決め画像)ですが、確認しなければいけない大事な点が一つあります。それは、「歯のアーチファクトが総頚動脈分岐部に被りそうか?」です。

怪しい、微妙かも、と感じたら迷わずポジショニングのやり直しを行いましょう。
ここより先はすべて「体が動いていない」という前提で撮影します。頭部CTAと同様に、サブトラクション処理で3D作成に必要な血管データを抽出するため、すべて同じ状態での撮影が必要になるというわけです。
Real prep用スライス(頭部CTAから撮影しているなら不要)

頭部CTAから続けて頚部CTAを撮影している場合は、Real prep用スライスの撮影は不要になります。
なぜなら、頭部CTAで造影剤が上がってくる時間を調べれば、最適な動脈相及び静脈相の撮影ができるからです。
これはテストインジェクションの手法を利用しています。
造影剤注入開始後、動脈のCT値が最も高くなる時間から、撮影開始までにかかる時間を引けばよいので簡単です。
Real prep用スライス(頚部CTAのみ撮影している時は必要)
一方で、頚部CTAだけを撮影する場合は総頚動脈にROIを置く必要があります。造影剤注入開始後、実際に造影剤が上がってきてから撮影をスタートさせるためです。

画像引用:http://medicalimagecafe.com/tool/neckmri/01.html
きんちゃんが働いていた病院では、頚部CTAはヘリカル撮影をしていました。(頭部CTAはボリューム撮影)
動脈相の撮影範囲が最も長いため、総頚動脈のCT値が上がってきてから早めにスタートさせないときちんとした動脈相は撮影できなかったですね。
少しタイミングが遅れたら、動脈相なのに静脈のCT値のほうが高い、、、
なんてこともあります。3D作成ができるくらいのCTがあれば問題ないのですが、ベストタイミングから外れるほど作りにくくなりますね(笑)
オートでスタートさせるなら、CT値が130~140くらいでスタートするように設定していました。
頚部動脈相、頚部静脈相

画像引用:https://tenshi.or.jp/popup/housya_b.html
頚部動脈相の撮影範囲は、外耳道~大動脈弓起始部までです。造影剤が上がってきて設定したCT値を超えたら撮影をスタートさせます。
マニュアルに設定した場合は、造影剤の染まり具合を見てスタートさせましょう。頭部CTAより早めにスタートさせる意識があるとうまくいきやすいです。(染まってきた~、ぐらい)
頚部動脈は人によってかなり狭窄していたり、場合によっては閉塞していることもあります。うっかり閉塞している側の血管にROIを置かないよう、事前予習はしっかり行ってくださいね👍
動脈相を撮り終えたら、折り返しで静脈相を撮影していました。

動脈相で少し早めにスタートしてしまっても、静脈相で十分に動脈のCT値も高ければそちらのデータを使って3D作成をすることもあります。(施設によるかも)
検査終了!患者をベッドから降ろす前に、、、

頚部静脈相の撮影まで行えば、検査終了です!
さあ患者をベッドから降ろそう!
とその前に、今一度撮影した画像に問題が無いか確認することをおすすめします。撮影した画像に問題がなければ、患者をベッドから降ろして次の場所に案内しましょう!
また、造影剤を使用した直後は必ず患者の様子を観察して、副作用が出ていないか注視したほうが賢明です。咳やくしゃみ、発疹などが見られないか気にしてみてください。
お疲れさまでした!!
- 必要な画像をすべて撮影したか?
- 撮影した画像に問題(ブレ、濃度不足)はないか?
- 患者の様子に違和感はないか?
まとめ:頭頚部CTAをスムーズに撮影するために

頭頚部CTAの撮影は、総合病院に限らず中小規模病院でも行われる検査業務です。
通常の造影検査よりも難しいポイントはありますが、手順を理解し、大事なポイントを押さえておくことで安定した検査が可能になります。
- 頚部CTAの検査の流れを理解しているか?
- 今から撮影する患者の検査目的を把握しているか?
- 頚部CTAの撮影タイミングの重要性を認識しているか?
この記事を読んだ皆様は、頭部CTAだけでなく、頚部CTAの流れや検査目的、大事なポイントを理解できたかと思うので次のステップである「再構成、3D作成」に進みましょう!
頭部CTAと頚部CTAを理解して検査できるようになれば、先輩からも「1人前だな」と言ってもらえるはずです!!👍
ではまた
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