4年目放射線技師と学ぶ、検査目的ごとの着目ポイント!~便の色で病気の箇所を判断しよう~

放射線技師の知識アップグレード

CT検査においても、撮影目的を確認することは当然のことですよね!

体幹部のCT撮影で検査目的が、「黒色便」や「鮮血便」のように便の色を示していることを経験した技師さんは多いのではないでしょうか?

患者が黒色便や鮮血便を呈する場合、それが示す可能性のある病態や異常箇所を正確に把握することが重要です。

便の色は、消化管の出血や腫瘍、炎症などの兆候を示すことがあり、適切な診断にはその背景を理解した上で、どの部位に注目すべきかを知ることで病気の早期発見につながるのです。

この記事では、便の色が示す可能性のある病態やCT画像での注視点について詳しく解説し、診断の精度を向上させるための知識を提供します!

一緒に学んでいきましょう!

便の色は検査時にどう影響してくるの?

この記事を読んでいる皆様の疑問は、以下のような感じだと思います。

  • 便の色が赤いと何が問題なの?
  • 便の色が違うと何が分かるの?

新人や学生はもちろん、知らない人からしたら当然の疑問なので、この記事を最後まで読んで一緒に学んでいきましょう!

聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥、ですよ!

基本知識のおさらい、共有

まずはこの記事を読むにあたって最低限知っておくと役立つ事前知識の共有をしましょう。

血便とは?

血便とは、消化管からの出血が便に混ざって排出される状態を指します。

血便は、出血が消化管のどの部位から生じたかによって、便の色や状態が異なります。

血便は軽度の病気から、生命を脅かす深刻な病態まで、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があるため、迅速かつ正確な診断が必要です。

血便の種類は?

血便には大きく分けて代表的なものが4種類あります。

  • 黒色便(メレナ):黒くタール状の便
  • 血便(ヘマトケジア):鮮やかな赤色の血液が混じった便
  • 暗赤色便(マルーン):赤黒い血が混じっている便
  • 粘血便:べたべたとして粘液がついている便

どのような便か、放射線技師はなかなか見る機会がないでしょう。

とりあえず言葉としてこういうものであるといった説明を簡単にさせて頂きました。

これらの血便の種類は、消化管の異なる部位からの出血を反映しており、便の色や性状から出血の原因を推測するための重要な手がかりとなります。

消化管の分類は?

消化管はその位置によって、大きく2つに分類されます。

  • 上部消化管:口~十二指腸まで
  • 下部消化管:小腸(空腸)~肛門まで

上部消化管内視鏡検査では口から、下部消化管内視鏡検査では肛門から挿入してそれぞれの分類されている箇所までを観察しています。

この記事で分かることまとめ

この記事を最後まで読むと分かることは以下の通りです。

  • 便の色の違いによる原因、病気の種類が分かる。
  • 出血が疑われる消化管の位置が分かる。
  • 画像上で、注意してみなければいけない消化管の場所が分かる。

それではさっそく本題に入っていきましょう!

本題

便の色は消化管の状態を反映しており、黒色便や鮮血便が観察される場合、消化管内での出血が疑われます。

黒色便(メレナ)

黒色便は、タール状で粘り気があり、強い臭気を放つことが特徴です。

これは、上部消化管からの出血が胃酸や消化酵素と反応して血液が分解され、その結果黒くなるためです。

高齢者ほど、黒色便によって体幹部の検査をする割合は多く感じます。

病気がある可能性の場所

  • 食道: 食道静脈瘤の破裂や食道癌が原因となることがあります。
  • : 胃潰瘍や胃癌などの病態が疑われます。
  • 十二指腸: 十二指腸潰瘍や十二指腸癌が原因となる場合があります。
  • 小腸:小腸潰瘍などの可能性も考えられます。

CT撮影時に注意してみるべき場所

  • 胃と十二指腸の描出: 胃や十二指腸の壁が肥厚していないか、不均一な造影パターンが見られないかを確認します。特に、潰瘍の部位や腫瘍の有無を注視します。
  • 食道と門脈系の評価: 食道静脈瘤の有無や門脈圧亢進症の兆候を見逃さないようにします。脾臓の大きさや門脈の拡張も評価し、出血のリスクを把握します。
  • 肝臓の評価: 門脈系の状態を把握するために肝臓の評価も行い、肝硬変の兆候がないか確認します。

鮮血便(ヘマトケジア)

鮮血便は、鮮やかな赤色の血液が便に混ざっている状態を指し、通常は出血が肛門に近い部位(下部消化管)から生じていることを示します。

病気がある可能性の場所

  • 直腸: 痔核や裂肛が多いですが、大腸癌も考えられます。
  • 結腸: 大腸ポリープや結腸癌、虚血性大腸炎が疑われます。

CT撮影時に注意してみるべき場所

  • 結腸と直腸の詳細な評価: 結腸や直腸の壁の肥厚や不均一な造影パターンが見られないかを確認します。特に腫瘍やポリープの有無、炎症の程度を詳しく観察します。
  • 腸管の虚血の評価: 虚血性腸炎が疑われる場合、腸管壁の浮腫やガス産生、造影効果の低下に注意を払います。
  • 肛門周囲の評価: 痔核や裂肛の有無は臨床情報と合わせて考慮し、必要に応じて補助的な診断手段を利用します。

暗赤色便(マルーン)

暗赤色便は、下部消化管の中でも比較的肛門から距離のある箇所(小腸や上行結腸など)からの出血を示すことが多く、そのために便が暗赤色になります。

病気がある可能性の場所

  • 小腸: 小腸腫瘍やメッケル憩室の炎症、虚血性腸炎が考えられます。
  • 上行結腸:結腸癌や虚血性腸炎の可能性があります。

CT撮影時に注意してみるべき場所

  • 小腸の評価: 小腸の壁の肥厚や腫瘍の有無、出血部位を確認します。特に造影CTでは、血管相を含めた詳細な評価が必要です。
  • 上行結腸の評価: 結腸の壁の肥厚、不均一な造影パターン、または局所的な浮腫が見られないかを確認します。虚血性腸炎が疑われる場合には、特に造影効果の低下に注意します。
  • メッケル憩室: メッケル憩室の有無やその炎症を確認します。これが暗赤色便の原因となる場合もあります。

粘血便

粘血便は、粘液と血液が混ざった便で、通常は炎症性腸疾患(IBD)や感染性腸炎が原因となります。

患者の症状としては、排便回数の増加や水様便、軟便が見られ、下腹部の痛みや不快感などを伴っていることがあります。

病気がある可能性の場所

大腸と直腸: 潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸癌が考えられます。また、腸管感染症も考慮に入れるべきです。

CT撮影時に注意してみるべき場所

  • 炎症性腸疾患の評価: 大腸全体や直腸にかけての壁の肥厚、炎症の広がり、潰瘍の有無を確認します。特に潰瘍性大腸炎やクローン病では、セグメント状の炎症が見られることがあります。
  • 感染性腸炎の評価: 腸管壁の浮腫や局所的な炎症、周囲脂肪組織の炎症所見が見られないかを観察します。
  • 周囲組織への炎症の広がり: 粘血便の原因となる炎症が周囲の組織に及んでいないかを評価し、フィスチュラ(瘻孔)の有無を確認します。

まとめ

いかがでしたか?

血便の種類に応じたCT検査での注視点を理解することは、早期かつ正確な診断を下すために非常に重要です。

黒色便、鮮血便、暗赤色便、そして粘血便は、それぞれ消化管の異なる部位からの出血を示しており、対応する病変部位を特定するために、CT画像で注意すべきポイントも異なります。

  • 黒色便の場合は、上部消化管(食道、胃、十二指腸)に病変がある可能性が高く、特に胃壁の肥厚や不均一な造影パターン、食道静脈瘤の有無を確認することが重要です。
  • 鮮血便の場合は、直腸や結腸に焦点を当て、特に腫瘍やポリープ、虚血性腸炎の徴候を見逃さないよう注意が必要です。
  • 暗赤色便では、小腸や上部結腸に注目し、特に腸管壁の肥厚や造影効果の低下を詳細に評価することが求められます。
  • 粘血便は、炎症性腸疾患や感染性腸炎が疑われるため、大腸全体と直腸の炎症の程度や潰瘍の有無を正確に評価することが必要です。

これらのポイントを押さえることで、血便の原因となる病変を効果的に特定し、適切な治療計画を立てる手助けとなるでしょう。

我々放射線技師は、CT検査でこのような患者の対応をすることが多いです。

この記事でまとめたポイントを活かして、適切な画像の読影をして便の色の変化が生じる原因を発見しましょう!

ではまた

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